イギリス映画『人生はシネマティック!』は、豪華な英国俳優陣がユニークな映画人たちに扮し、映画製作を題材にした夢の世界に観客を誘ってくれる。全米やヨーロッパ各国の映画祭で絶賛され、マスコミや批評家からも惜しみない拍手喝采を浴びた、まさに“映画好きのためのベストワン・ムービー”が、ついに日本でもお披露目となる。
1940年、第二次世界大戦下のロンドン。ドイツ軍からの空爆が日毎に激しさを増す中、イギリス政府は国民の不安を取りのぞいて戦意を高揚させるための宣伝映画(=プロパガンダ映画)を製作していた。そして、ひとりの女性に白羽の矢が立った!これまで一度も執筆経験のないコピーライターの秘書が、新作の脚本を書くことになったのだ! それは、フランスのダンケルクでドイツ軍の包囲から英軍兵士を救出した、双子の姉妹の物語。この感動秘話を共同で脚本化に挑む彼女だったが、いざ製作が始まると、政府の検閲や軍部の横やり、ベテラン俳優のわがままやセリフ棒読みのド素人の出現により、脚本が二転三転するトラブルが続出! それでも戦争で疲弊した国民を勇気づけるため、無茶な要求にも負けず、彼女は必死にベストを尽くす。そんな姿に出演者やスタッフは共感し、現場の結束力は高まっていく。しかし、映画が完成間近になった時、予想もつかない最悪の事態が待ち受けていた――。
プロパガンダ映画の劇中劇を織り交ぜた、独創性あふれる設定。クセ者ながら魅力的な登場人物たちが繰り広げる、軽妙洒脱でウィットに富んだ台詞の数々。映画ファンの心を捉えて離さない当時の撮影風景―。映画が何よりも娯楽だった時代の熱気に興奮しながら、観る者は映画人たちの人間模様に魅了され、そして何より、情熱的な新人脚本家と仲間たちが決してあきらめずに奮闘する姿は、思わずグッと胸に迫る。一筋縄ではいかない映画の製作現場では、彼らは現実と映画の世界を行ったり来たりしながら、恋をしたり、喧嘩をしたり、笑って、泣いて、歌ったり…。そこには、戦争という暗い時代、誰もが明日の命さえ保証されず、苦しみ喘ぎながらも、たくましく前を向いて生きようとする人々の輝きが描かれている。

主人公の新人脚本家カトリンを演じたのは、『007/慰めの報酬』(08)のボンドガール役で一躍脚光を浴び、『アンコール!!』(12)、『ボヴァリー夫人とパン屋』(14)などで奥深い人間の魅力を演じきった名女優ジェマ・アータ-トン。本作では同時代に生きた女性の心の弱さと力強さを見事に表現している。彼女をスカウトしたバックリー役には、『あと1センチの恋』(14)、『世界一キライなあなたに』(16)でヒロインの恋人役を爽やかに演じ、世界中の女性から熱視線を浴びているサム・クラフリン。過去の栄光にすがり、カトリンと対立する落ち目のベテラン俳優には『ラブ・アクチュアリー』(03)、『パイレーツ・ロック』(09)で日本でも大人気のビル・ナイが扮し、脇役ながら主役級の存在感を放っている。さらに、『運命の逆転』(90)のアカデミー賞®俳優ジェレミー・アイアンズ、映画界のサラブレッド俳優ジャック・ヒューストン、日本での大ヒットも記憶に新しい『おみおくりの作法』(13)のエディ・マーサン、『キャロル』(15)でルーニー・マーラの相手役を熱演したジェイク・レイシー、渋い演技が光る『LOGAN/ローガン』(17)のリチャード・E・グラントなど、英国を代表する超一流のキャストが結集している。
監督は、『幸せになるためのイタリア語講座』(00)でベルリン国際映画祭銀熊審査員賞を受賞した、世界的に注目される女性監督ロネ・シェルフィグ。キャリー・マリガン主演の『17歳の肖像』(09)ではサンダンス映画祭観客賞を受賞し、アカデミー賞®でも作品賞を含む3作品にノミネートという快挙を達成。アン・ハサウェイが主演し話題を呼んだ『ワン・デイ 23年のラブストーリー』(11)は日本でも多くの女性から熱烈に支持されるなど、これまで数々の名作を生み出してきた彼女が、本作でも物語を鮮やかに紡いでいる。
いつの時代も、映画には夢がいっぱい詰まっている。物語の作り手たちは、観客に想いを届けようと一生懸命になり、観客はスクリーンの向こうに自分たちの姿を重ねる。極上のユーモアと愛で彩られた本作は、まるで“シネマティック”に(映画のように)あなたの人生も輝かせてくれるだろう。

1940年、第二次世界大戦下のロンドン。
連戦連勝のドイツ軍からの絶え間ない空爆にさらされている街は、男性が次々と徴兵され、女性や子供、老人ばかりが残されていた。そんな中、イギリス政府は国民を鼓舞するために戦意高揚映画(=プロパガンダ映画)を日夜製作していた。
ある日、コピーライターの秘書カトリン(ジェマ・アタートン)が、徴兵されたライターの代わりに書いた広告コピーが情報省映画局の特別顧問バックリー(サム・クラフリン)の目に留まり、彼女は新作映画の脚本家としてスカウトされる。彼女が描くのは、双子の姉妹が父親の漁船で海にこぎ出し、「ダンケルクの戦い」でドイツ軍の包囲から撤退するイギリス兵士を救う物語だった。新しい職に就いたカトリンは、スペイン戦争で足を負傷し、空襲監視員を務めながら画家の夢を諦めきれずにいる夫エリス(ジャック・ヒューストン)との暮らしを守るため、なんとしても映画の仕事を成功させることを決意する。 情報省映画局からの出向する形で制作会社ベイカー・プロでの執筆がスタートしたカトリンは、バックリーとパーフィット(ポール・リッター)の3人の共同で脚本化に挑戦する。だが滑り出しから、情報省のフィル・ムーア(レイチェル・スターリング)に呼び出しを食らってしまう。姉妹が乗る船ナンシー号のエンジン故障の場面が、英国の威信を傷つけるから脚本を直せと要求が入ったのだ。脚本のペアを組むバックリーからも容赦のないダメ出しをされ、厳しい検閲や政府の要望がある度に衝突しながら、脚本は進んでいった。
やがてスタッフや役者が決まり、いよいよデヴォンでの3週間のロケが始まるが、監督はノンフィクションの経験しかなく、出足から不安がいっぱい…。出演者のひとり、アンブローズ(ビル・ナイ)は、かつて刑事ドラマシリーズで人気を博したプライドを捨て切れない落ち目の俳優だった。そんな彼も、戦争の空爆でエージェントのサミー(エディ・マーサン)を亡くし、代わりにその姉のソフィー(ヘレン・マックロリー)が新しい代理人として、アンブローズに新境地を開かせようと奮闘していた。
製作陣の足並みが揃わない中、軍部からの横やりが入る。アメリカの参戦を促すため、無理矢理に追加のキャスティングが決まったのだ。勇敢なアメリカ人を演出するため、アメリカ人パイロット、カール・ランドベック(ジェイク・レイシー)が加わることになったが、彼は演技経験が全くないズブの素人。そこでカトリンは、アンブローズを何とか説得して演技指導を頼むことに成功する。出演者たちで何度もリハーサルを繰り返しながら、少しずつ絆を深めて撮影は進んでいく。カトリンにとっても、映画作りは確実にやり甲斐のあるものになっていた。バックリーとも仕事をしていく中で、互いに親しみと好感を抱くようになる。そんな2人の情熱が、脚本にも次第に表れていった。自分が活躍するシーンを増やしたいアンブローズのわがままに付きっきりになっていたカトリンだが、ロンドンで個展を開いた夫のもとに帰るため撮影現場をあとにする。
いつしか特別な存在となっていたバックリーと書き上げた脚本も、完成に近づいた。だが、撮影も終盤に差し掛かったころ、ロンドンは大規模な空爆に襲われる。破壊しつくされた街に打ちひしがれるカトリンだが、それでも最後まで映画を完成させようとあきらめずに奮闘する。しかし、最悪なことに、カトリンたちの前には最大の困難が待ち受けていた…。
はたして脚本は完成し、映画を国民に届けることはできるのか――?